シアトルの若手起業家へのメンタリング

最近よく地元のシアトルで、若手起業家から相談をうける。中には私より年上の新米起業家もいる。バイオ業界の起業の平均年齢はITに比べて高い。厳しく法律で規制されている業界なので、規制の枠組みを十分理解していることが重要だからだ。 私のことを誰かに聞いたり、地元のネットワークイベントで知り合ったり、中にはLinkedinでコンタクトをしてくる人がいたりなど、きっかけはさまざまだ。

年齢は30代〜40代と実に幅広く、皆それぞれに専門性とバックグラウンドがある。彼らの目の輝きを見ていると元気になる。起業するモチベーションは、世界を変えるかもしれない技術やアイデアに出会ったという確信から生まれる。自分が打ち込める、その何かに出会えて、高揚した充実感があるのが伝わってくる。

10年前の自分も、彼らと同じように、とにかく多くの起業家に会おうとしていたのを思い出す。
当時は、駆け出しの自分に多忙な先輩起業家がどうして会ってくれるのかと思ったものだが、今はその理由がわかる。

リスクをとって新しいことを始めようと思っている人は必ず光るものを持っている。彼らはダイヤの原石なのだ。魅力があり、元気がある。彼らから新たな視点を見つけることもある。

相談を受ける場所は私のオフィスが入っているビルの1階にあるスターバックスで、30分くらい時間をとるようにしている。

新進の起業家たちから受ける質問を少し紹介したい。私も同じような相談を先輩の起業家あるいはメンターに持ちかけてはアドバイスをいただいたものだ。

■「どうやって人を集めるのか」

ネットワーキング等で投資家や業界の人たちが集まるイベントに積極的に参加して、多くの人と話をする。そこでたまたま知り合って話をした人が紹介をしてくれることもある。信頼できる人からの個人的紹介に勝るものはない。日頃からネットワークを広げることも重要である、今日そのスキルを持った人材が必要なくても、明日必要になるかもしれないからだ。

■「心得えについて」

自分の技術に自信を持つことは大切だが、謙虚さと感謝の気持ちを持ち続けることが大変重要である。大きなことを成し遂げるのは決してひとりの力でできるものではなく、賛同してくれる仲間が必要である。これを決して忘れないでほしい。

約束したことを必ず実行する、大風呂敷は広げないなど、当たり前のことをきちんと守り続ける必要がある。人物の評判というのは起業する何年も前から醸成されるものでもあるから、将来起業しようと考えている場合はいますぐ自分の行動や言動をチェックする必要がある。

あとは、ラボをどうやって設置すれば低コストで運用できるか、技術、ビジネスモデルの将来性についての相談も多い。

著書でも触れているが、経営者として経験が浅く、悩みが多く日々傷ついていた頃に「どんなに傷ついても前進し続ければ、バトルスカー(戦傷)の数だけ強いリーダーになれる」という励ましの言葉を故デイビット・ファナング氏からいただいたことがある。この言葉は一生忘れられないし、今でも困難に直面したときに思い出して自分を鼓舞している。

なるべくたくさんのアドバイスを得ることは大切である。しかし、最後に決断を下すのは自分自身に他ならない。

私が創業時のビジネスモデルから創薬に切り替えた時も、もちろん、一緒に仕事をする社員や周りの多くの人から情報を収集したが、最終的には自分で決めてここまできた。

決断することは勇気がいるし責任も伴うが、リーダーの重要な役割は決断することである。決断しない先送りは、間違った決断以上に最悪であると言われる。多くの決断はやってみなければ分からず、早く決断して失敗してから修正した方が早くゴールに到達すると考えられているからである。是非、皆さんも失敗を恐れず決断をしてほしい。

あと重要なのはあらゆる決断で失敗したときのプランBを考えておくことである。できれば複数のバックアッププランを持っておけると理想的である。私が会社を10年やって来れたのは失敗が少なかったからではなく、数多くの失敗をしたが、必ずリカバリーできたから存続できた。バックアッププランの重要性を感じている。

最近は、教わるより教える方が機会としては増えてきている。それでもやはり、仲間を含め、いろんな人たちと話をすると学べることは多いので、一生勉強だと思ってコミュニケーションをしている。メンタリングは何も一方向ではないのである、自分がメンターとしてアドバイスをしている相手からも学ぶべきことは必ずある。

若い起業家には先輩起業家にどんどん会ってもらいたいし、会ってもらえるよう、自分を磨き続けて欲しいと思う。