子どもが育つ環境をつくるのは大人の責任

シアトルにOpen Window Schoolという、5, 6歳から13, 14歳の子どもたちが通う学校がある。学級制度は同じ北米でも州と地域によって違うが、ここの場合1年生から8年生までをカバーする学校で、日本的に言えば小中一貫校になる。詰め込み作業のような学習はさせず、「なぜ?」という質問を子どもが自ら投げかける環境を大切にしている。自然に多様性を受け入れる心を育むことも方針の柱の一つにしている。この学校にお招きいただき、10月に講演をさせていただいた。

このような学校なので、いろんなことに興味を持つ子どもたちがいて、なるべくわかりやすいように目のこと、そして日本からワシントン大学に来たら起業のチャンスに巡りあったことを話した。桿体、錐体の働きや目の構造に興味をもって質問をしてくれる子どももいれば、何かを確かめるように自分の目の周りをおす子どもの姿は微笑ましかった。

今の会社に関しても、「どうやって会社をはじめたのか」「どうして日本ではなくアメリカで起業したのか」「起業する時にもっとも苦労することは何か」など、私が アメリカにやってきたのちにどういういきさつがあったのかを問う質問だった。

こういった質問は日本でもよく聞かれるが、この学校の生徒たちからの質問のニュアンスは少し違うと思う。日本で生まれ育った日本人が外国人としてアメリカでキャリアを築くという視点ではなくて、アメリカ人になるためにアメリカで働くのか、外国人としてアメリカで働くのかという選択肢も含んでいたように思う。子どもたちは私のアイデンティティに強い関心を持っていたと感じた。参加をされた保護者からもそういった感想をいただいた。

ご存知のように、アメリカは「移民の国」と言って良いくらいに移民が多い。現世代だけではなく、1、2世代前は他国籍と言う人々がたくさん住む環境の中で、自分の母国は、と問いかけられる。例えば永住権をとっても、そのまま永住するのではなく、永住権はあくまでもアメリカ国籍取得のステップでしかないとの考えが強い。

アメリカで起業したのは渡米してから2年目のことだったので、アメリカで住み続けるのか、起業してアメリカの人間として会社を維持していく気があるのか、そもそも信じていい人物なのかなど、はじめて起業しようとする私に向けられる疑問は厳しいものだった。しかし、そういった疑問は厳しいどころか至極当たり前だということも理解していたので、成功を重ねて信頼を稼ぐしかなかったし、自分のアイデンティティの中にアメリカが大きな部分として存在することも伝える必要があった。

これからの社会を背負う子どもたちが、好奇心の赴くままにいろいろな疑問をオープンに質問し、議論しあえる環境を作るのは私たち大人の責任だと思う。均一な世界から多様性ある世界へと世の中は移り変わっている。そこにこそ生まれる新たな可能性とかニーズといったものを見いだせる力を子どもたちが育んでいけるように私たち大人が頑張らなければならないと思う。