多様性を重んじる社会の創造

先日BSフジの「PRIME NEWSの集い」に参加させていただいた。政界、財界、メディア界などの重鎮やPRIME NEWSの出演経験者が招かれる会である。反町理キャスターと八木亜希子キャスターに出演の御礼をお伝えして会場を後にした。

BSフジのPRIME NEWSに出演させていただいたのは去年の9 月19日のこと。今日はその時のことを少しお話したい。番組の最後に出演ゲストによる「私の提言」を紹介するコーナーがある。その時に書いた言葉が 「多様性を重んじる社会の創造」である。

番組がはじまる前に控え室でボードと大きな筆ペンが渡され、一発勝負で書いた。
この筆ペンは写真で見るとわからないが、通常よりかなり大きい。こんなに大きな筆ペンを手に、字を書いたのははじめてだった。不慣れなりに気合いを入れて書いたつもりだが、番組を見てくださったみなさんはどう思われたのだろう。

「多様性を重んじる社会の創造」

この言葉を提言に選んだ理由は、私がいままでイノベーションに関わる仕事に携わってきた中で、最も大切にしてきたことだからである。多様性ある環境と尊重できる文化を組織の中で育ててきた。そして、そういった重んじるべき価値観を「世界を変える」という目標を目指して頑張る仲間たちと共有できていることが会社の成長に大きく貢献してきた。沢山の失敗の中からイノベーションを起こすことができたのは、我々が多様性あるチームだからであると確信している。

多様性とは、単にいろんな人種や社会的バックグラウンドを持ち合わせた人を集めればいいわけではない。一人ひとりが多様性を受け入れることができなければならないし、リーダーである私自身がそれをきちんと示すことができなければならない。お互いの多様性を認める協調性の有無、高いコミュニケーション能力、先入観を取り払うことができるかなど、コアな特性は皆が理解し共有していなければならない。我々はこれをコアコンピテンシーと呼んでいる。このコアを共通の価値観として持った上で多様性を確保することが大切だ。

私が意識的にしていることがある。イノベーションを起こすために必要な価値観として、あえて空気を読まないで自分が思ったことを言うようにと、いつも従業員に伝えている。議論に関してかみ合わないことであろうと、専門外であろうと、そういう意見ほど出して欲しいからだ。

例えば、技術開発関連の会議で、人事担当の人が、私はこの技術の専門ではないけれどもこう思うとか、ということをあえて言ってもらう。
専門外の人が発言することもそれを聞くことも時間の無駄だと捉えられがちである。それは、99.9%は大したインパクトのない意見であることは否めないから仕方がない。しかし、ごくまれに専門外だからこその発言の中に光る意見がある。そのイノベーティブなアイデアを引き出すために、辛抱強く時間をかけて無駄な議論を許す環境を作っている。

Give the benefit of doubt疑わしいことでも相手の言うことを信じてみるということだ
どういう人種で、どういうバックグラウンドなのか、あるいはどんな専門性を備えているのか、果たしてこの分野のエキスパートであるかなどは考慮せず、その人の意見は意見として聞いてみて是が非かを考える。また、例え今まで的外れなことを言い続けていたとしても、ついにはすばらしいアイデアを提案してくれるかもしれないのである。先入観を取り払ったところにあっと驚くイノベーションがあるのだから。

その分野で育ってきた専門性の高い人は、知らず知らずのうちに、その専門分野のルールとか既成概念とか培われた伝統で思考パターンが形成され、そこから飛び出すのが難しくなっていることが多い。ところが全く違う分野の人から見ると、専門家の発言が全く的外れに感じるなど、全く異なる視点から パラダイムを転換するような専門家では思いつけないことを提言できる可能性があるのである。

均一性を重んじていてはイノベーションを生むことはできない 。これからの日本に必要なのは多様性を重んじる社会を創ることだと考えている。