東京工業大学のホームカミングディ2014にて

2014.5.30

5月25日に開催された東工大のホームカミングディ2014にお招きいただき、大岡山キャンパスで講演をさせていただいた。講演では、アキュセラの事業内容と歴史、創薬ビジネスの実態についての話をした。

その中で、 あえて一般論としてJoe Robinsonの「起業家としての7つの条件」を紹介した。10年ごとにキャリアを変えてきた話をする時に、やりたいことを見つけることの大切さ、思い切って一歩を踏み出してみると意外に前に進めることに気がつくものだといった話をするのだが、資質として鍛えておくべきことがある。いろいろと起業家はこうあるべきだといったものは世の中に溢れているが、この7つの条件は私にとって一番しっくりくるものなので、引用をさせていただいた。

「起業家としての7つの条件」
• 忍耐、粘り強さ
• エネルギーと情熱
• リスクの許容能力
• 明確なビジョン
• 断固たる信念
• 高い柔軟性
• チャレンジ精神

出典: entrepreneur.com,「The 7 Traits of Successful Entrepreneurs by Joe Robinson, January 10, 2014

私が歩んできた人生をこれらの条件にあてはめてみると、こういうものになると思う。

「忍耐、粘り強さ」の例えとして、大学院は4年なのに、研究のために7年間もいすわって結果が出るまでねばったことを挙げたい。はじめから7年を見据えていたわけではないが、「網膜に特異的な遺伝子を見つける」というテーマを持っていたので、何年かけても諦めるつもりはなかった。毎日が同じ作業の繰り返しであっても、ひたすら続けた。今日頑張ったから一日成功に近づいたと考えればまた明日も頑張れるものだ。

頑張り続けた先にはきっと答えがある。必ずなんとかなると思い込めるほどの「エネルギーと情熱」が私にはある。

無駄な投資に終わるかもしれないけれども、成功した時には大きな達成につながるリスク。そのアップサイドを見極めてリスクに挑戦してみようという意識をもつこと、そして、社会としてもこういった「リスクを許容する」器が必要なのではないだろうか。

起業家というのは多くの人を巻き込んでやっていかなければならない。今でこそ仲間と同じ目標に向かって進んでいるが、私がはじめて「飲み薬で失明の恐れのある病気を治療する」というビジネスモデルを打ち出した時は、身近な研究仲間が猛反対した。みんなそれぞれの常識を持っているからだ。まずは身内を説得することから始めなければならない。何かを始める時に自分の身近にいる人たちを説得するのが一番の苦労である。当時は私の夢は無謀だと思われていたからというのも苦労した理由のひとつ。「ビジョンは明確に示し」、論理と、場合によっては感情論も説得には必要だった 。

周りを説得するためには明確なビジョンに対しての「断固たる信念」が必要である。信念なくして周りを巻き込むことはできない。

仲間が集まると、次に乗り越えないといけないのは、破壊的(disruptive)なイノベーションを起こすまでに経験する山のような失敗である。

アキュセラ創業時は、ワシントン大学で行っていた網膜再生の研究成果をベースにした創薬支援ビジネスをやっていたのだが、自らが創薬するという路線に軌道修正をした。会社設立当時の技術にとらわれずに世界から失明を根絶するという目標はかわっていない。ただ、それまで持っていた技術をすっぱり捨てて、違うことを始めることができたのは「柔軟性が高い」からだと考えている。捨ててでも新しいことをやる。未知なる冒険をやってのけようという「チャレンジ精神」が求められることは言うまでもない。

起業を考えている人は、この7つの条件に出てくる項目。これに自分が当てはまるか、もしくは当てはまるよう資質を鍛えることができるかを自分に問いかけて欲しい。そして自分自身に納得のいく答えが出た時点で起業に打ち込み成功を掴んで欲しい。

最後に余談を。この5月からPRESIDENT Online で連載をスタートした。グローバル市場を見据えた仕事術やシアトルでのエピソードなどを紹介していくので楽しみにしていて欲しい。

 

<経営者の言葉:アキュセラCEO・窪田 良>

開眼!「朝令暮改」仕事術