GLOBISプロフェッショナルセミナーと東京大学にて

6月はGLOBISと東京大学にて講義にお招きいただいた。MBAを学ぶ社会人のみなさんも、高校を卒業して間もない大学生も、興味をもって聞いてくださってありがたかった。

GLOBIS経営大学院のProfessional SeminarではManagement of Innovation: Capturing, Developing and Achieving, from a Seed というテーマでいかにしてイノベーションの種をつかみ育て実らせていくかについて話をさせていただいた

グロービス経営大学院講師のDr. Mark Lee Fordと 2013-14 International Affairs Fellow for Japan, Council on Foreign Relations Dr. Derick Du Vivier

グロービス経営大学院講師のDr. Mark Lee Fordと
2013-14 International Affairs Fellow for Japan, Council on Foreign Relations Dr. Derick Du Vivier

起業して12年が経ち、会社が実績を築きながら成長してきたように、私自身も研究者であり医者である立場から経営者への転身で多くを学んできた。創業当時の自分を振り返ると、アメリカに渡って2年にも満たない時期での起業だったので、アメリカでやっていくためのノウハウ、社会的な信頼、それこそ私と仕事をして大丈夫かどうかなどの不安感、資金などいろんな要素に不確実性が表面に表れていたのかもしれないと思う節がある。ワシントン大学で助教授をやめて起業を選ぶことに反対する人が多くいたのは、一般的にアカデミアからビジネスへの転身をして成功するのは難しいと考える人が多かったことに加え、私に起業の実績がなかったからだろう。

最近よく言われるのは、「君は研究者であり医者だったのに、数年見ない間にすっかり経営者 になってるじゃないか」という言葉。人生は学びの連続で、起業してからの12年、経営者として従業員が働ける環境をつくり、事業を育てていくために乗り越えてきた壁は数知れない。

アカデミアからビジネスにキャリアチェンジできたのは、「世界を変えたい」という思いがあったから。研究者として緑内障原因遺伝子「ミオシリン」を発見できたことや、眼科医として緑内障や白内障を患うたくさんの患者さんを治療して感謝してもらえたことは有り難いことであり、やりがいは大きかった。でも、治療の術がない患者さんは少なくなかったことは事実であり、目を背けることはできなかった。世界に枠を広げるとその数は格段に増える。治療法のない眼疾患の治療につながる足がかりを見つけたいという思いが、研究者である自分に芽生えないはずがなかった。

世界の誰かが現在治療できない眼疾患の治療法をいずれは確立するかもしれない。それに貢献できる研究をしたい。そういう思いを抱いて慶應大学からワシントン大学に移籍した。今でこそ失明を防ぐ新薬開発を目指しているが、渡米した当時に新薬開発を自分が手がけるとは考えてもいなかった。

そんな私がゼロから会社をおこし、ここまでこれたのは、プロジェクトを遂行する能力が卓越しているとかしていないとかの話ではない。アメリカという社会が冒険を許したからである。

そういったアメリカでの事例を日本にそのまま移行することはおそらく不可能であろう。やはり根本となる社会環境そのものを変える必要があるのではないかとアメリカと日本を行き来する中で感じている。世界を見据える起業家が一人でも多く増えることで日本の社会も変わってくるだろう。小さくも素晴らしい芽が大きく育つためには、芽が持つ生命力だけではなく、土壌と環境が大切なのだから。

GLOBISのプロフェッショナルセミナーに聞きにきてくださった方々のほとんどはMBAを学ぶ社会人たちだった。時間の制約もあるなかで、何か新しいことを始めようと学ばれている。
あまり馴染みのないバイオ製薬業界に生きる私の経験話ではあったけれども、聞いてくださったみなさんには少しでもお役に立てていただけたことと願いたい。

そしてGLOBISでの講義の翌週に東京大学で教壇に立たせていただいた。これまでいろんな大学でお話をさせていただいてきたが、この度の東京大学では起業して以来、初めての学部生への講義だった。テーマは、「グローバル時代をどう生きるか:プロフェッショナルが語る新たな可能性」。

東京大学での講演の様子

東京大学での講演の様子

1年生と2年生が中心で、今年の3月に高校を卒業したばかりの生徒もいた。教壇から学部生の顔を見ていて思ったのは、この中にはリーダーになる人材もいればフォロワーになる人材もいるという事。どちらに適しているかという問いに今すぐ答えを見つける必要はない。ただ、リーダーシップにはフォロワーシップに長けた仲間も必要である。自分が力を発揮できる分野の開拓にハングリーになって欲しい。その中で、今は縁がなくても将来、一緒に仕事をする仲間にも出会えるだろう。いろんな分野の人に会って深く会話をするうちに、知らないことが紐解けることもある。自分の知らない世界は広く感じるもの。しかし、冒険は自分の世界を自然と広げる。講義のテーマに「グローバル時代をどう生きるか」とあるように、グローバル時代を生きるためには世界を見て、経験して、世界観を掴まなければならない。一度は日本を離れて文化も言葉も環境も異なる国で何かに挑戦して、小さくてもいいから日本では経験できないことを成し遂げてみて欲しい。

最後に、6月1日付けで慶應義塾大学医学部客員教授に就任をさせていただくことが決まった。慶應義塾大学での学びと経験があったから今の私がある。そのご恩をこれからの未来を切り拓く学生たちのお役に立つことで返していきたい。