瞳は健康への窓

最近読んだ、ウォールストリートジャーナルの記事に、健康障害は患者の息を分析することで診断できるケースが増えてきているという興味深い話が書かれていました。歴史をさかのぼりますと、医学の父、ヒポクラテスは、紀元前400年頃に、吐息のにおいと病気の関係についての論文を書き残しています。その後、何世紀にも渡る研究を経て、肝臓や腎臓に疾患がある患者が吐く息には、独特のにおいがあることがわかってきました。

アメリカや世界中の研究者たちにより「呼気検査」が開発されています。この検査をすれば、ぜんそく、糖尿病、結核、そして、胃腸の感染症などのさまざまな健康問題を診断することができるとのことです。呼気のバイオマーカー*を分析することによってこれらの病気の診断を目指します。

*疾患などに関連して発現する化学物質の量・濃度・程度をあらわす数値で、疾患の状態や変化、治癒の程度を特徴づける指標

驚いたことに、さらなる研究で、犬が人の呼気を嗅ぎ分けることで特定の種類のがんを見つけることができるという発見が報告されています 。

実は、みなさんの眼を検査することによって体全体の様々な健康状態を知ることができるのをご存知でしょうか? Eyes are the windows to the soul目は心の窓ということわざがあるように眼は糖尿病や循環器疾患など様々な病気を知らせてくれる「健康への窓」なのです実はこれらの病気は体の他の部分に症状が現れるよりもずっと早い段階から眼底や眼の表面あるいは眼の機能に変化が現れるのです

例えば、「Alzheimer’s Association International Conference」というアルツハイマーに関する学会で発表された研究によると、 記憶障害や関連する症状が出る前の段階であっても、眼球運動の検査をすることによって、アルツハイマー病の早期発見が出来ると報告されています。

ランカスター大学でイギリスの研究者たちが開発した検査法では、コンピューター上の光の動きを人が眼で追い続けることができるか、また指示にそって急に眼をそらすことができるかを測定しました。 この検査法によると、アルツハイマー病患者と健康な人の間で大きな違いが検出されました。アルツハイマー病患者は、光から目をそらすことを命じられた時に、間違ってしまうことが健康な人に比べてはるかに多かったのです。まだまだ少人数での実験結果ですが、生体を傷つけない非浸襲的な方法で患者を診断できて、アルツハイマー病の早期発見の可能性が期待できるものだと思います。

他にも眼を診察することによって診断できる病気はたくさんあります。老廃物を処理する肝臓の能力が低下すると、強膜という目の白い部分がビリルビンという代謝産物の沈着により黄ばんできます。これは強膜黄疸と言われ、肝臓疾患の初期兆候です。もし、みなさんご自身や身近な方の目にこういった症状が見られる場合は、すぐに眼科医に診てもらいましょう。

アメリカでTVパーソナリティとして活躍しているジャック・オズボーン(Jack Osborne)さんという方の話を紹介します。ちょうど、1人目の子供が生まれて間もない頃に、突然、著しく右目の視力が低下したそうです。医者に診てもらったところ、自己免疫疾患の一つの多発性硬化症(日本では特定疾患に認定されている指定難病の一つ)による視力低下であるとの診断を受けました。この病気の初期症状には、オズボーンさんが体験したのと同様に、しびれや麻痺、片目の視覚障害やひどいときには失明などが含まれます。

もちろん、これは症状、診断ともに極端な例ですが、珍しい話ではありません。もし、眼や視力に異変を感じたら、眼以外の病気の兆しかもしれません。

日本では、ある一定以上の年齢から定期検診に眼底検査が含まれてきますが。ご自身では症状に気がつかないことも多いので、年に一度は、眼科医に眼や視力の検査をしてもらいましょう。